こんな方にオススメの記事
マラソンの練習として割とメジャーな「ビルドアップ走」。
その名が示すとおり、徐々にペースを上げていくというのは分かる。
けど、実際にやろうとすると
なーんてことありますよね?
なぜ、分かりづらいか?
それは自由だから!
設定ペースなんて、目的によっても、走力によっても、何なら体調によっても違っていい。
みんなちがってみんな良いのです。
しかし、目安がないのも困りもの。
ってことで、目的別の設定ペースを伝授します!
ビルドアップ走とは?
ビルドアップ走(BU走)とは、簡単にいうと
- ゆっくり入り、徐々にペースを上げて、最後速いスピードで走りきるトレーニングのこと
- 目標とするペースを楽に走れるようにするためのトレーニングのこと
普段のペース(もしくは、それよりゆっくりのペース)から入って上げていけるので、誰でも簡単にムリなく負荷がかけられる人気のトレーニングだと思います。
簡単なようで難しいペース設定
BU走が誰でも簡単にできるのは、好きなところから始めて好きなところまで自由に上げられるからです。
しかし、この「自由」というのがくせ者。
自由すぎると人間どうしていいかわからなくなってしまいます。
なので、ある程度ルールが必要です。
── ということで!
私が貴殿・貴女にルールを課してしんぜよう!
具体的なペースは目的によって変わるので、後述しますが、基本的に以下のルールにしたがいます。
- 距離 全長10km~15km程度
- 区間 2km~5kmで一区切り
- 上げ幅 20"/kmくらいずつ
- 基準 Mペース(レースペース)
1km毎に10秒ずつ上げるという猛者もいらっしゃいますが、ペース管理がシビアで次の区間でペースが落ちようもんなら萎えます ^^;
特にロードでやろうと思うと、信号に引っかかったり交差点での減速したり勾配てブレまくったりと、なかなかに難易度が髙いです。
30秒だと急激に上がった感があるけど、2~3kmで20秒くらい上げるなら守れるんじゃないでしょうか。
何度も云いますが、設定ペースを守ることより自己肯定感を守ることのようが大事なので(←大のお気に入りw)
BU走の目的と効果
BU走は設定ペースにより効果は変わってきます。
先ほど、Mペースを基準にすると云いましたが、具体的にはMペースをどこに持ってくるかで効果が変わってくると思っています。
※Mペース:マラソン等のレースを走る平均ペースのこと
- ゆっくりから始めてMペースまで上げる場合
- Mペースをまたいで上げていく場合
- Mペースからスタートして追い込む場合
しかし、共通して云えることがあります。
それは
マラソンを走り切る上で、前半は温存し、後半にペースを上げて走る「ネガティブ・スプリット」が理想と云われています。
(逆に徐々にペースを落としていくことは「ポジティブ・スプリット」と云います)
ビルドアップを意識することで「上げグセをつける ≒ 前半温存して耐える」練習ができるようになるのです。
ガマンもマラソントレーニングの一環ですね。
そして、上げたときに大事なのは「息が乱れたとしても、フォームは乱さないこと」です。
安定したフォームで速く、できる限り長く走れるようになるためです。
また、フォームが崩れるとケガのリスクが上がってしまうので、いくら追い込むとはいえコントロールできる範囲内で上げましょう。
3つの設定ペース
それぞれ目的別に3つのBUメニューを用意しました。
- E→M
- Mまたぎ
- ソツケン
目的別とは云いましたが、実際は上から順に難易度が上がっていきます。
解説します。
(1) E→M
- 初心者向け
- 目的:BU走に慣れること
最後にMペース(マラソンペース)まで上げることを目指すビルドアップ設定です。
持ちタイム | ① | ② | ③ |
---|---|---|---|
SUB4.5 | 7'15 | 6'40 | 6'20 |
SUB4.0 | 6'30 | 6'00 | 5'40 |
SUB3.5 | 5'45 | 5'20 | 5'00 |
SUB3.0 | 4'55 | 4'35 | 4'15 |
- 10kmの場合 ①5km→②3km→③2km
- 15kmの場合 ①7km→②5km→③3km
ラストを全力まで追い込まないので、比較的ラクに守れるペース設定だと思います。
むしろ、前述した「前半を上げずに耐える」ことに慣れる練習と云ってもいいでしょう。
まずはここからBUとは何ぞや、というイメージをつかんでみてください。
(2) Mまたぎ
- 中級者向け
- 目的
- Mペースがラクに感じられるように
- 無酸素性代謝閾値の底上げ
Mペースを超えて、T(閾値)ペースまで上げていく、そこそこ苦しい設定です。
持ちタイム | アップ | ① | ② | ③ |
---|---|---|---|---|
SUB4.5 | 7'15 | 6'40 | 6'20 | 6'00 |
SUB4.0 | 6'30 | 6'00 | 5'40 | 5'20 |
SUB3.5 | 5'45 | 5'20 | 5'00 | 4'40 |
SUB3.0 | 4'55 | 4'35 | 4'15 | 3'55 |
②をレースペースに据えて、①+20秒、③-20秒ペースに設定しています。
E→Mのメニューと同じように、配分は「①7km→②5km→③3km」で良いでしょう。
閾値走はニガテでも、ビルドアップなら「気づいたら閾値ペースまで上がってた」ってことも実現できるので、うまく洗脳して閾値を底上げしちゃいましょう。
(3) ソツケン
- 中級者以上
- 目的
- VO2Maxの底上げ
- 目標タイムへの達成
ビルドアップ走の行き着く先は、卒検(ソツケン)だと思っています。
ソツケンはいきなりMペースから突っ込み、全長15kmを5km毎上げていく高強度なビルドアップ走です。
提唱者の岩本能史氏の名から「岩本式ビルドアップ」とも呼ばれており、設定ペースの合否で目標のマラソンタイムをクリアできるかが検定できることから「卒検」と呼ばれています。
そのため、ペース設定が肝心で
- 5kmまでは目標タイムの平均ラップ
- 10kmまでは5km単位で1分速いペース
- 15kmまでは5km単位でさらに1分30秒速いペース
→それができたら目標タイムクリア
というように、云わばテストのような練習です。
例えば、代表的な目標タイムに置き換えると、以下のような設定ペースとなります。
目標タイム | ~5km | ~10km | ~15km |
---|---|---|---|
SUB4.5 | 6'24 | 6'12 | 5'54 |
SUB4.0 | 5'40 | 5'28 | 5'10 |
SUB3.5 | 5'00 | 4'48 | 4'30 |
SUB3.0 | 4'15 | 4'03 | 3'45 |
※従来のペース設定は「持ちタイム」を基準にしていましたが、ソツケンは「目標タイム」が基準となります
いきなりレースペース(Mペース)で突っ込むため、10~15分程度のウォーミングアップをしておきましょう。
また、閾値(Tペース)を超えてIペースに迫るまでグイグイ上げていくので、最後はゼィハァどころかヒィヒィするまで追い込むことになります。
しかし、その効果は実証済みで、私もサブ3.5のチャレンジ前に卒検をクリアし、無事サブ3.5達成できました。
詳しくはこちら▼
通常のBUに慣れてきたら、ぜひチャレンジしてみてください。
たった1つの注意点
ビルドアップ走をやる上で、唯一、注意点をあげるとするなら
理想は、意識的に上げるのではなく自然と上がっていたという感じです。
チャレンジしてみて、そもそも上げるのさえ苦しければ、そのままペース走にするというのもありです。
ひとまず上げてみたけど、さらに上げるのはちょっと…という場合は、もう一度ペースを落としてウェーブ走にしてしまいましょう。
走力的には問題なさそうにみえる設定ペースも、できるかどうかは、結局、当日の体調で変わってきます。
そんなときは、設定を落としてやる勇気も大切です。
いちばん大事なのは、設定ペースを守ることより ── ですからねw
まとめ
このように、ビルドアップ走は
- 心肺強化
- スピード持久力養成
- 設定ペースを守る練習
- 終盤を上げるクセ付け
- ミドル走としての距離耐性
まずは、ご自身のMペース(マラソンペース)を確認し、
- 最後Mペースに向かって始める
- ゆっくり入り、Mペースをまたいで最後上げる
- Mペースから入り、ゼーハーするまで追い込む
ビルドアップ走を謳歌するうちに、目標タイムに近づいていること、うけあいです。
健闘を祈ります!