深夜2時に突然目が覚めたので、ロックマンのボスキャラを作ってみた。
ロックマンが面白いことの一つとして、ボスキャラを一般公募していることにある。
誰もが一度は投稿して脚光を浴びたいと夢見たんじゃないだろうか。
齡三十を過ぎた今、ここで腹をくくって夢に立ち向かってみようと思う。
── “夢は逃げない。逃げるのはいつも、自分だ”
僕もその一人。
もちろんマリオやポケモンも良いが、僕にとって『ロックマン』がその最高峰に君臨している。
2010年に発売されたWii版の『ロックマン10』でさえこのレトロ感
▼教祖としての『ロックマン』
ファミコンなんかのドット絵や8bitサウンド(チップチューン)を立派なアートだと崇めている集団がいる。(ロックマン10公式サイトより)
最新のテクノロジーに一切頼らないその一貫したフィロソフィに感服してしまう。
そんな魅力に浴していると、発信側に回ってみたくもなる。
ボスキャラ公募というのは、信者たちに夢をシェアしてくれる夢のような仕組みなのだ。
その頃、「『ロックマン3』のボスキャラ募集には絶対応募するぞ!」と誓った記憶があるが、誓ったまま20年以上が過ぎてしまった。
気づけばナンバリング作品は「ロックマン10」までリリースされている。
とうとう、誓約を実現するときが来た。
▼ボスキャラ・マトリクス
もう小学生の僕とは違う。
無節操に描きまくるというのはやめて、市場調査し、ターゲットを定めた上でクリエイティブな活動に着手したい。
大人の嗜みとして、こんな表を作ってみた。

過去の10のナンバリング作品をさかのぼってみると、公募から採用された作品は、後のイラストレータや漫画家など当時から画力やセンスのあるプロの卵たちが連ねていることがわかる。
例えば、ストライクマンが「ロックマン10」に来て、突然「スポーツ」属性でサプライズ枠にすべりこんで来ている。
新参者の僕もその枠なら狙えるんではないだろうか。
以前、「ご当地ロックマン」を募集している時期があった。
画力もセンスもない僕は同じ土俵で戦ってはだめだ。
ニッチを見つけて、別のアイディアで勝負を挑もうと思い、以下のように過去のボスキャラを分析してみた。
少なからずニッチがあることが見て取れる。
▼特殊武器・グルーピング
ロックマンのボスキャラ投稿は、同時にボスが使う「特殊武器」のアイディアも募集される。
どんな武器がロックマンに相応しいかグルーピングしてみた。
今は無きピボットテーブル機能を復活させて。
ベタな遠距離攻撃より、「ストップかける」とか「ブーメラン」「近接攻撃」みたいな方法が少数派。
少数派が注目を浴びるとすれば、やはりその辺が狙いどころか。
▼さあ、ボスキャラと特殊武器を考えよう
狙いは定まった。あとはどんなコンセプトでギャップを解消するか、だ。(今思えば、これに投稿しときゃよかった)
まず最初に思い浮かぶのは市区町村章だろう。
もはや、あっぷりノートと市区町村章は切っても切れぬ縁。
すべては市区町村章に帰着する。
ご存じのとおり、このシンボルは「大柿」のヘタが意匠化されたもの。
ロックマンのボスキャラで「果物」属性は新しい。ニッチ枠を狙うには十分すぎる属性ではないか。
ということで、「柿」をコンセプトにすることに決めた。
僕は柿はニガテだけど、大垣近郊では富有柿が有名である。
それをボスキャラに当てはめていく。
ロックマンのボスキャラってこんなスタイルをしてるイメージ。
この目を描くだけでロックマンぽさが出る。
やっぱり「目」って大事。
ボディは松尾芭蕉の衣装でも着せてみるか。
大垣は「奥の細道」の終着駅というのもウリの一つ。
ということで、大垣市にまつわる要素をミックスして完成したのが、これだ↓
命名「パーシマン」
本当は「パーシモンマン(柿男)」でも良かったが、語呂が悪いので「パーシマン」とする。
***
特殊武器を考えるのには苦心惨憺した。
僕の中の小年生が、くだらないアイディアを挙げてはしりぞけ、しりぞけては挙げ続けるからだ。
柿のヘタを投げる「ケーリクス・カッター」はどうか ── ベタすぎる。却下。
露骨に柿をぶつける「パーシモン・ボム」は ── このご時世、食べ物を粗末にしてはいけないと炎上を免れえない。
松尾芭蕉の持ってる杖で殴る「バショウ・スティック」 ── そのネーミングセンスもさることながら、ボスが殴ってる絵柄を想像すると切なすぎるよね。
もう、雑なアイディアばかりが飛び交う。
ここで一旦、芭蕉のごとく俳句でも読んで心を鎮めよう…としたとき、天からのギフトが舞い降りた。
「ハイク・フラッシュ」
これだ。
世界平和を俳句で読むのだ。これぞ時世にあった特殊武器だ。
武器で戦うのを止めて、まず話し合ってみないか。
▼原案ハガキを投稿しよう
珠玉のボスキャラが誕生した。
柿から生まれた「パーシマン」(特殊武器:ハイク・フラッシュ)
さあ、あとはこれをハガキをしたためて投函の準備だ、とハガキを手に伸ばそうとした矢先、齡三十一の僕が立ち止まる。
── どこに?
と驚くべき事実が発覚する。
── 今、だれも募集していない。
応募は読んで字のごとく、「募りに応える」ことを云う。
募集があってこその応募だ。
今は夢に立ち向かうべきときではなかったのかもしれない ──
いや、今さらこぼしたミルクを嘆いたところで何も生まれない。
未来にかけよう。まだチャンスはあるはずだ。
しかし、調べれど調べれど、お呼びはかからじ。
それよりももっととんでもないことが発覚する。
── 「ロックマン9」からは一般公募すらされていない
格言を身に沁みて体感した瞬間であった。