こんな方にオススメの記事
皆さま、「サージ」をご存知でしょうか?
サージは走りに強くなるために
- コスパが高い
- ローリスクハイリターン
- ジョギングついでにできる
ふだんジョグの後にWS(ウィンドスプリント、流し)を入れられているランナーには特にオススメです。
ぜひ本記事を読んで、さらに強くなっちゃってください。
サージとは
サージとは
英語の"Surge"という単語から来ており、意味はそのまま「急上昇」です。
ビルドアップ走のように徐々にペースを上げていくのではなく、最後までゆるいペースで走り続けて、ラスト1kmだけ一気に上げます。
ビルドアップ走よりキツくなく、ジョグやEペース走より負荷が高い、そんな位置づけ。
1km頑張るだけの、ローリスクハイリターンな練習です。
YouTube
私がはじめて「サージ」の名を知ったのは、このYouTubeチャンネル「らんラボ!」です。
非常にコスパが高い練習とのことで、故障中の身だった自分に刺さりました。
ブログ
プロランナーでもあり、ウェルビーイング(株)の代表をもつとめる池上秀志のブログ記事。
ここで彼をして「ローリスクハイリターンな練習」と言わしめるのがサージです。
記事には以下のような記述があります。
- サージという練習は中学、高校の強豪校が多く取り入れています
- 市民ランナーの方もランニングを生活の中心にドンと置くことはできないので、状況としては中学生、高校生と同じで、短期間で、でもあまり負荷をかけずに走力アップを目指すことになります
実業団の選手と違って、仕事の合間をぬって練習時間をひねり出さねばならない市民ランナーは、学業が本業の中高生と似ているかもしれません。
限られた部活動の時間にほどよい負荷をかけられるのがサージ。
ケニアでも同様にサージが積極的に取り入れられているそうです。
- ケニアに行った時も、このサージをしょっちゅうやっていました。イージーランとか言われながら、大体サージなんです
- ケニアの選手はハードな日以外の練習では12-16kmしか走らず(中略)朝の練習はサージが中心
集団走をしていてラストはフリーとかいって、結局は競争のようになる、あれもサージの一種とのこと。
元祖、駆けっこですね。
サージのやり方
ただ上げるだけのシンプルな練習ですが、少しテクニカルな側面についてもお話しておきたいとおもいます。
目安ペース
サージのペースについて、結論からいうと「決められたペースはありません」。
サージ(急上昇)はその名が示すとおり、上げる前と比べてどうか、という相対評価なので。
しかし、あえて云うなら
- 全力ダッシュではない
- 心拍数の80%〜90%程度
- 最終的にWSと同等のペースで
- フォームが崩れてケガしない程度に
- 平均ペースはTペースからIペースくらい
それまでジョグしてきた距離にもよるとも思います。
たとえば、
- 10kmくらいまでなら+Iペースまで上げて良し
- 20km以上なら+Tペースくらいまでにする
いずれにせよ、気持ち良く、しかしキツすぎないペースで上げていきましょう。
サージの中身
サージを行っている1kmの区間はずっと上げ続けるというよりかは、徐々に上げていき、最後がトップスピードに乗って走りきるのが理想的です。
サージの中身を分解すると ──
- ①一気に上げる
- ②徐々に加速していく
- ③最後はほぼトップスピード
という感じです。
最終的にフォームが崩れてしまったり、最後ペースが落ちたりするのはムリが生じている証拠。
故障のリスクがあるので、最後まで余力を残して走り切れるペースを維持するようにしましょう。
手動ラップを使う
ゴール地点までうまく1km刻みで終われたら理想的ですが、どうしてもコースの都合で5.5kmなどの半端な距離になってしまうこともあると思います。
そのようなときはラスト1kmになったら手動でラップを切ることで対策を打てます。
ゴールまでの残りの距離が把握できていることが前提になりますが。
やってみよう
サージはジョグやLSD(Long Slow Distance)と相性が良いです。
普段のジョグに
平日、5km程度のジョグでもラスト上げられると気持ちいいですね。
休日の距離走に
ゆっくり長距離を走ったあとも最後上げられると得した気分になります。
5つのメリット・効果
サージをやっていく中で感じたメリットや効果は以下のとおり。
- 気軽に負荷が足せる
- 充実感が得られる
- 上げグセがつく
- 気張らずにできる
- スピード耐性がつく
気軽に負荷が足せる
ただのジョグもサージを入れることで練習強度を上げることができます。
サージ1本でWS(ウィンドスプリント、流し)5本を連続して走り続けるようなイメージなので、ジョグなどの低強度のトレーニングもサージ1本加えることで中強度トレーニングにできると思っています。
充実感が得られる
ある程度の負荷をかけることで、「やった感」が生まれます。
寝起きでカラダが起きてなくても、最後上げるだけなら頑張れるんです。
ケガしていても1kmなら耐えられます。
短い練習時間だとしても、ゼェハァできれば不思議と充実感が湧いてくるものです。
ランニングって素敵。
上げグセがつく
サージはラストを上げるので、
(ラップ単位で比較すれば)と落ちこむことがありません。
つまり、失敗しないのです。
人間、1kmだけだと思えば頑張って上げられるものです。
ラスト上げることを習慣づけて、上げグセをつけちゃいましょう。
気張らずにできる
サージの利点は、ジョグの延長でできるというところにあります。
という気合いもいらないし、
と燃え尽き症候群になることもありません。
インターバル系の練習のようにランニングウォッチ頼りのワークアウト設定も不要だし。
前掲のYouTubeやブログ記事では、ジョグのウェアでできるという点を推されていました。
つまり「めんどくさくない」ということです。
スピード耐性がつく
サージは低強度からポイント練習への架け橋になるともいえます。
たとえば、ポイント練習の前日にTペース(閾値ペース)やIペース(インターバルペース)まで最後上げてジョグを終えたとします。
ただ単にジョグするつもりだったのに、しっかり閾値走やインターバル走の動きが確認できるって嬉しくないですか?
翌日は気持ちよくポイント練習に入れるようになります。
もちろん、レース前日の最終確認も同じです。
5kmレースならIペース付近、10kmレースならCV、ハーフならTペースなどなど、サクッと目標ペースを確認できちゃうのです。
応用編
サージを入れるタイミングや回数によって変則的なトレーニングにすることも可能です。
ウェーブ走
急激に上げる回数を増やすことで ウェーブ走(変化走)のようにすることもできます。
ウェーブ走とは
- 疾走
- 緩走
を波のようにくり返して負荷をかけるトレーニング方法です
サージを2本にするだけでも違います。
ラスト上げきって終わるのではなく、もう一本残すことで
- もう一本走るメンタルを養う
- エネルギーが温存できるようになる
- 結果的に距離が踏める
グングニル走
ラストを一気に上げるサージですが、ランニングコースの都合上、ラスト1kmは交差点や住宅街だから上げられないということもあるかもしれません。
その場合は、途中を1kmだけを上げるという方法もありです。
その場合、グングニルにはもう一つ目的があって、サージが終わったあとに疲れたカラダを引きずって走ることになるので
負荷をかけた後は、負荷を感じない走り方を模索しましょう。
5つの注意点
便利でコスパの高いサージですが、急上昇を伴うので注意が必要です。
- 意識しすぎない
- 上げすぎない
- 場所に配慮する
- 低強度と組合せる
- メリハリをつける
以下に補足します。
意識しすぎない
と意識しすぎてしまうとメンタルに響いてしまいます。
動きがこわばってジョグの質が下がってはいけないので「調子が良ければサージ」くらいの気持ちで臨めばOKです。
気持ちが乗らなければムリにやる必要はありません。
上げすぎない
いくらサージ=急上昇だからと云って、上げすぎてはいけません。
たまにフォームが乱れるくらい全力で駆け抜けてしまう方がいますが(私のことです orz)、逆効果なのでご注意ください。
サージはTT(タイムトライアル)とは違います。
前述したように、終盤にかけてペースが落ちていってはいけないので、力加減は大事です。
ボロボロになって次の練習ができなくならないように肝に銘じましょう。
場所に配慮する
スピードを出さないジョグならある程度、市街地でも走れるかもしれません。
信号待ちも許容できるし、歩行者ともフィジカルディスタンスをとりながら走れるでしょう。
しかし、ペースアップするサージは急停止できないし道幅がせまいと危険です。
歩行者や交通量の少ない場所、堤防や農道など広くて交差点がないような道をジョギングコースに組み込みましょう。
ユル練と組み合わせる
あくまで低強度から上げるのがサージ(急上昇)です。
必ず低強度の練習と組み合わせてください。
高強度の練習で最後上げるのはケガのリスクがあるので自粛しましょう。
調子がいいからと上げると痛い目をみるので要注意です。
▼あえて調子がいいところで止めるのも戦略のうちです
メリハリをつける
すべてのトレーニングに云えることですが
2つの意味でサージに偏らないようにしたいものです。
全ジョグをサージにしない
疲労をためない、血行を促進する、アクティブレストの目的でジョグするときはサージは要りません。
ローリスクハイリターンな練習とはいえ、すべてのジョグをサージにしないことも大切です。
休むときはしっかり休みましょう。
サージだけに頼らない
いくらサージのコスパが高いとはいえ、サージだけで強くなるには限界があります。
サージだけじゃなく、インターバル走や閾値走などの練習も織りまぜながら、トップスピードを上げて、さらに維持する努力も不可欠だからです。
サージを活用しながら、うまくポイント練習へ移行していってください。
まとめ
おさらいです。
恥ずかしながら「サージ」の名を知ったのは最近でしたが、「ジョグの最後だけ上げる」というのは以前からからちょくちょくやっていました。
ペース上げることに抵抗がなくなってきたのは、少なからずサージのおかげだったかもしれません。
思えば私の尊敬するサブ3ランナーさんも、ペース走のラストだけ「どーん」と上げて締めくくっています。
ふだん無意識にサージしていた方もそうじゃない方も、いま一度、意識的にサージを取り入れてみてください。
と再認識できることうけあいですよ。
こうやって、「走る」を創ろう。