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編曲も作曲のうち。作った曲は必ず演奏する機会を設ける。

講談社現代新書の表紙も背表紙もまっきっ黄ぃで、我が本棚でもよく目立つ《作曲家の発想術》。10年近く前に買った本ですが、アジャイルとか《かえるの合唱》とかの視点で読んでみると結構学び多い書籍だったことに今更気づきました。
 

作曲家の発想術

作曲家の発想術

著者はユニークな指揮者としてもおなじみの青島広志氏。
 
発売当初に読んだときは第一章が自慢話ばかりで反吐が出そうだったが、 改めて目を通してみると、第二章以降は西洋音楽史や理論、実践的な話が展開されていて、まさにタイムリーな話題が数多く載っていたので、特に印象的だった4つのことをここに残しておくとします。
 
・編曲の類型
・モチーフ
・童謡の変奏曲
・作曲に対する姿勢
 
 

▼編曲の類型

何となく気になってたことですが。
 
     正確には作曲とは言いがたいが、編曲も作曲の一つの手段
 
そう、確かに《フレームワーク作曲法》も作曲って銘打ってるけど、やってることは編曲ですよね。
でも、編曲も作曲のうちらしいので、まあ間違ってないってことで。
 
さらにこう続きます。
 
     編曲の仕方によって、3つの段階に分かれる
 
《ピコガエルの唄》の現状とあり方と照し合せて、以下に覚書しておきます。
 
(1)トランスクリプション
     まず第一段階としてトランスクリプションがあります。
 
          原曲の音もリズムもまったく変えずに他の編成に直す方法で、これはトランスクリプション(移し替え)と呼ばれる
 
フレームワーク作曲法》で提唱しているMTRのT(音色)だけを移し替えたフェーズのことですね。
そういえば、トランスクライビングについてはこの本が詳しいです。
 

DTMによるオーケストレーション実践講座

DTMによるオーケストレーション実践講座

トランスクライビングする前は、もともとコンデンススコアというものがあってそこから各楽器に振り分けるという作業があります。
普通、コンデンススコアはピアノで作るんですけど、私はピコピコでやっちゃっています。
偶然にもそのピコピコが既にトランスクリプションになってしまってるんですよね。
 
 
(2)前奏・伴奏・後奏の追加
     次の段階として、
 
          原曲がとるに足らないと思われるような小曲などの場合、前奏や後奏を付けたり、伴奏の和音やリズムを変えたりする程度に手を加える
 
とるに足らないとは畏れ多くて云えませんが、童謡を小曲とするなら、前奏などを付け加えることはしますし、和音やリズムを変えることはMTRでいうM(メロディ)やR(リズム)を変更するフェーズと言えます。
 
《ピコガエルの唄》が(1)までとするなら(2)を反映することによって、よりオリジナリティが加わることでしょう。
 
 
(3)パラフレーズ
     そして、最終段階として
     
          パラフレーズと呼ばれる方法で、たとえば民謡を基に長い曲を書く
 
     という方法があります。オペラや幻想曲なんかで使われる手法ですね。
 
     ゆくゆくは《かえるの冒険》というコンセプト・アルバムを作るときのお愉しみってことで。
 
 

▼モチーフ

私が個人的に気にかけている、モチーフ(動機に)ついても論じられています。
 
     音楽の最小単位は2小節と決まっていて、これを動機と呼ぶ。
     動機を2つつなげると当然4小節となり、これを小楽節と呼ぶ。
     小楽節を2つつなげると大楽節になり、1個の細胞が出来上がるのである。
 
動機は「モチーフ」とも言います。このモチーフについて、著者はベートーベンの《運命》を挙げてこう述べています。
 
     非常に有名な冒頭の四つの音は、この交響曲の中枢を成すいわば細胞である
 
と。モチーフについては個人的に思い入れがありすぎるので、ここでは語り尽くせないが、語りの場を別の機会に設けるとして、いずれにせよ《ピコガエルの唄》には欠かせないテーマだと思ってます。
 
単位が二小節であれば、「かえるの唄が~♪」のフレーズが一つのモチーフと言えそうですね。この音型を繰り返し使うことでモチーフをモチーフたらしめることができそうです。
 
 

▼変奏曲

冒頭にいきなり
 
     変奏曲は、限られた素材、つまり短い素材に変化を加えて、何回繰り返しに耐えられるかを競う作曲法
 
とある。そうだったのか!知りませんでした。パターンが多いほど優勢ってことなんですね。
 
この本ではモーツァルトの《キラキラ星 変奏曲》がサンプルに挙げられています。
同じ童謡という意味では、私のやろうとしていることは《かえるの合唱 変奏曲》かもしれません。
 
キラキラ星 変奏曲》は変奏12まであるので、各々のパターンが主題にどのような変化が加えられているかを解説しています。
 
シャコンヌパッサカリアも変奏曲に類するんですか。先人の手法からどんどん吸収していきたいものです。
 
 

▼作品に対する姿勢

終盤に勇気づけられる一言、モチベーションが上がる一言がありました。
 
     どんな作品でも書かないよりは書いてしまったほうが尊いのである。
 
いくら才能があっても、書かなきゃ意味がない。才能がなくても書いたもん勝ち。そして書いてみないことには才能があるかどうかも分からない。そして書かないことには育たない。
という、結局書かなければ何も始まらないという思いが最近の私を突き動かしています。「井戸の中の蛙になろう」っていう記事にも書いたようにね。
まさにその思いを代弁してくれている一節がありました。
 
     もしも劣等感に襲われた場合は、自分より上ではなく下を見ること。<中略> 隣で飼っている犬は作曲をしない、それよりはマシであると考えて、自分の位置を確認することが大切だ
 
と。
 
かつて本田さんにも言われたことがあります。
 
     まず、狭いマーケットで一番になる。
 

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まず、自分のマーケットを極めれば、自ずとマスはついてくるものだ、と。
これが大事、って自分に言い聞かせています。
 
そして、青島氏。最後に重みのある一文で締めくくります。
 
     必ず演奏する機会(チャンス)を作ること!
 
千里の道に耽ったり、机上で空論を語りがちな私に欠けているもの…なんてヘコむ必要はない!隣で飼ってる犬よりマシだから!