あなたは村上春樹氏の小説が好きですか?
残念ながら僕は、最後まで読み終えられたことがない。
最初はいいかんじで読み進められた『海辺のカフカ』も、空からイワシが降ってきてから頭に入ってこなくなってしまった。
そもそもフィクションがちゃんと読めないので、お呼びでなかったのかもしれない。
翻って、村上氏のエッセイならどうだ。
これはものすごくおもしろい。
『村上朝日堂』や『村上ラヂオ』なんかはおもしろすぎて、一気に読破してしまった。
おもしろい、というか、どことなくかわいいのだ。
エッセイってそういう著者の人間味がかんじられるのがいい。
その人間味をつたえられるハルキムラカミの表現力はやはり、さすがだ、とおもうのである。
■村上春樹のエッセイ × ランニング
そんな村上春樹氏のエッセイのなかで、最近気になっていた本を手にいれた。
小説家がマラソンを走る意味、走ることが書くことにもたらす恩恵、ということを書いている『走ることについて語るときに僕の語ること』である。

- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/06/10
- メディア: ペーパーバック
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2010年発行の本なので、今さら感はあるが、なぜ今さら読んだかといえば、僕も(ハーフだけど)マラソンを走るからである。
いまの僕にとって、「村上春樹のエッセイ × マラソン」というのは非常に魅力的なファクターのくみあわせなのだ。
そして、現に(拾い読みではあるが)読んでみてやはり、おもしろいと感じる部分がいくつかあったので、ここで紹介させていただければと思い、筆をとった次第である。
■鍛えよ!集中力と持続力で才能は補える
第4章「僕は小説を書く方法の多くを、道路を毎朝走ることから学んできた」では、走ることが小説家(はたまた、それ以外の生業)にどのように役立つかが、淡々とだけどハルキ氏の言葉でしっかりと語られている。
小説家にとってもっとも重要な資質は、言うまでもなく才能である。文学的才能がまったくなければ、どれだけ熱心に努力しても小説家になれないだろう。これは必要な資質というよりはむしろ前提条件だ。
(中略)
しかし才能の問題点は、その量や質がほとんどの場合、持ち主にはうまくコントロールできないところにある。量が足りないからちょっと増量したいなと思っても、節約して小出しにしてできるだけ長く使おうと思っても、そう都合よくはいかない。
そう、才能は天からのギフトであり、往々にして気まぐれなのだ。
よって、そこをどうサポートしていくかが重要である。
才能の次に、小説家にとって何が重要な資質かと問われれば、迷うことなく集中力をあげる。自分の持っている限られた量の才能を、必要な一点に集約して注ぎ込める能力。これがなければ、大事なことは何も達成できない。そしてこの力を有効に用いれば、才能の不足や遍在をある程度補うことができる。
集中力の次に必要なものは持続力だ。一日に三時間か四時間、意識を集中して執筆できたとしても、一週間続けたら疲れ果ててしまったというのでは、長い作品は書けない。
集中力と持続力。
これは小説家にかぎらず、必要なチカラである。
素質があるのに集中力がない子を見ると、もったいない気がしてしまうし、そんな僕も持続力があるほうではないので、たまに自分を怨めしくおもったりしてしまう。
でも、悲観的になることはない。
このような能力(集中力と持続力)はありがたいことに才能の場合とは違って、トレーニングによって後天的に獲得し、その資質を向上させていくことができる。毎日机の前に座り、意識を一点に注ぎ込む訓練を続けていれば、集中力と持続力は自然に身についてくる。
そう。集中力と持続力は鍛えることで、資質を補える可能性があるのだ。
そこで、走ることにつながっていきます。
これは日々ジョギングを続けることによって、筋力を強化し、ランナーとしての体型を作り上げていくのと同じ種類の作業である。刺激し、持続する。刺激し、持続する。この作業にはもちろん我慢が必要である。しかしそれだけの見返りはある。
日々走ることで、集中力と持続力が鍛えられるというのである。
これは僕にとって大きな後ろ楯になることだろう。
世界の村上がそういうならまちがいない。
僕は走ることで集中力と持続力を高めているんだと、おのれに言い聞かせながら走りたい。
与えられた個々人の限界の中で、少しでも有効に自分を燃焼させていくこと、それがランニングというものの本質だし、それはまた生きることの(そして僕にとってはまた書くことの)メタファーであるのだ。
僕はまだランニングをはじめて1年も満たないが、それでも得たものは多くある。
それに加えて集中力と持続力のオマケ付きである。
これは走り続けるしかないんじゃないか。
才能がない、集中できない、長続きしない…とお悩みのかたは是非「走ること」を検討されてみてはいかがでしょうか。