あっぷりノート

Fix the Bits | あっぷり工房

旅、ギア、サプリ、マインド、トレーニング ── “走る”は創れる

『運動脳』を読んで半年走ったら、パニック障害が良くなってきた

まずは結論から!

パニック障害でこんなんだった人が…

週3回、約20分のランニング(というかジョギング)を6ヶ月間続けたところ ──

ここまで回復してきました。


きっかけは『運動脳』という本に出会ったこと。

そこから具体的にどのように復活してきたかを綴らせてください。


今、同じ症状で悩んでいる人には励みになれば幸いですし、当ブログの読者の皆様には私自身の現状報告になればとおもいます!


これまでのあらすじ

2年前、ランニング中の熱中症により、救急搬送されてしまいました。

その時のトラウマから昨年パニック障害を発症。


そんな絶望の淵で『運動脳』を読み、少しずつ這い上がってきたので、その話をば。

『運動脳』とは?

運動脳』は、スウェーデンの精神科医アンデシュ・ハンセンが著した、運動が脳にもたらす効果を色んな角度から著した本です。

スマホ脳』で一躍有名になった方ですね。


本の内容は、運動がいかに脳にとって有用で

  • モチベーション
  • アイディア
  • ストレス
  • 集中力
  • 学力
  • 健康
を改善する効果があるかを教えてくれています。

まあ、ここまではよくある話。


今までも運動が脳に効くと語る本、科学的な証拠を示してくれる本 etc. たくさん読んできたので、この『運動脳』もそうなのかなー、と読み進めていたところ「うつ」の章だけは毛色が違ったのです。

ここに私が『運動脳』を特別扱いする理由がありました。

異色の「うつ」対策

前項であげたような運動が効くという

  • ストレスが溜まる
  • 学力が上がらない
  • アイディアが湧かない

という悩みって、ハッキリいって運動しなくても他に手立てがあるんですよね。

環境変えりゃぁいいじゃんとか、もっと勉強しろよ、とか切り口かえてみれば?とか、云々。


でも、うつ(鬱病)って、悩みに対するアプローチが分かりにくいんです。

悩めば悩むほど、発作が起きるかもしれないという得も言われぬ不安感から発作が起きる、という悪循環に蝕まれてしまいます。


物理的に「心」を取り除いたり、入れ替えたりできれば治せるのかもしれませんが、言うまでもなくそんなことは不可能です。

そもそも心の病気なので正常な判断すらできません。


だから精神科医にかかって、色んな抗うつ剤を試して、いちばん効きそうな薬のお世話になります。

で、トラウマ(心的外傷)をだんだん弱めていくというアプローチに入るのです。


あくまで対症療法でしかありませんが、私も今よりラクになるなら…と諦めかけていたその時。

『運動脳』の一文に出会ってしまったのです。

運動には抗うつ剤と同じ効果がある──

ランニング=抗うつ剤の根拠

運動と抗うつ剤が同じとはどういうことか?

うつ病、抗うつ剤、ランニングをそれぞれ「ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニン」という神経伝達物質レベルに分解すると腑に落ちたので、カンタンに解説しておきます。

ここで各神経物質の役割は触れないので、ぜひ『運動脳』を手に取ってみてください ^^

うつ病の原因を分解する

うつ病を発症するきっかけは仕事やプライベート、人間関係など人それぞれです。

私の場合は、熱中症による後遺症(自業自得…^^;)


しかし、原因の違いこそあれど、うつ病を脳科学的にフラットに見たとき、共通して云えるのは

  • ノルアドレナリン
  • ドーパミン
  • セロトニン
が不足している状態である、ということだそうです。

※コレ、めっちゃ大事


まずここで発想の転換が必要です。

「うつ病」とか「パニック障害」と聞くと構えてしまうけど、客観的に「ノルアドレナリン・ドーパミン・セロトニンが欠乏している状態」と捉えましょう。

そうすることで、すこし冷静になれるので。


大事なことなのでもう一度言います。

「うつ病」「パニック障害」は「ノルアドレナリン・ドーパミン・セロトニンが欠乏している状態」と捉えるのです。


まだ何とかなりそうな気がしてこないでしょうか。

薬を成分に分解する

一方、藁にもすがる思いの患者にとって「薬」は魔法のように思えてしまいますが、これも冷静に考えるとそんなことはありません。

あくまで薬は薬。


さんざんお世話になっておいて何ですが、「抗うつ剤」も所詮人間が作り出したものです。

『運動脳』をして

抗うつ剤の多くは

  • ノルアドレナリン
  • ドーパミン
  • セロトニン

を配合したものである

と云わしめます。

※これまた、めっちゃ大事


「薬」も魔法のように捉えるのではなく、成分に分解して考えるんです。

「うつ病」を「ノルアドレナリン・ドーパミン・セロトニンの欠乏している状態」と変換したように、「抗うつ剤」を「ノルアドレナリン・ドーパミン・セロトニンを補充するもの」と捉えてみましょう。


そうすると、ワケの分からなかった心の病に対して、だんだん理解が深まってくることがわかります。

ここまで来ればあと一歩。

もちろん処方箋には感謝しかないが、乗り越えるときに限っては「所詮クスリなんて!」という気構えが大事。

ランニングの効能を分解する

『運動脳』には様々な研究結果が挙げられています。

紹介するとキリがないのですが──

うつ病患者を抗うつ剤を服用するグループと週3回30分運動するグループに分けて実験。4ヶ月後いずれのグループも症状が改善した。半年後、うつ病を再発したのは抗うつ剤グループは38%。運動グループは8%。運動は薬より強力だった

運動は薬よりも強力だった」そうな。


さらに『運動脳』は言います。

ウォーキングやスロージョギングでも効果はあるが、

最も効果があるのはランニング
であると。


なぜなら、ランニングはBDNF(脳由来神経栄養因子)という最強の脳物質を生むからです。

奇跡の物質BDNFを生む


BDNFとは一言でいうと「意欲減退を防ぐ、科学が『奇跡』と呼ぶ物質」だそうで、

  • 新たに生まれた脳細胞を守り、成長を促す
  • 脳細胞間のつながりを強化し、学習や記憶の力を高める
  • 脳の可塑性を促し、老化を遅らせる

という働きがあります。


しかし、うつ病患者はそのBDNFが極端に不足しているそうです。

実は、先に挙げたノルアドレナリンやドーパミン、セロトニンはBDNFをつくるためのきっかけにすぎないのですが、ランニングはそのBDNFを直接作ってくれるのです!


すごい。

ランニングはリスクゼロ

しかも、ランニングはノーリスク(副作用なし)で。


確かに薬はスグ効きます。

といっても最初は2週間くらいかかりますが、体に合えば即効性は高いです。


でも、その反面副作用があります。

私も最初は下痢に悩まされました。
#汚くてスマソ


一方で、ランニングは副作用ゼロです。

これはありがたいことですね。

一番効くのは 「インターバルトレーニング」

ちなみに一番効くのはインターバルトレーニングだそうです。

元気でも憂鬱なトレーニングなのに(笑)なかなか気持ちが落ちてるときにやろうとは思えないけどネ。

でも、WS(ウィンドスプリント)で刺激を入れたり、ランニング以外の動作(例えば、バーピーケトルベルなど)で心拍を上げるのも良さそう。


何より心拍数を上げるのが大事らしいので。

身体を動かすことで「心拍数や血圧が上がっても、それは不安やパニックの前触れではなく、よい気分をもたらしてくれるものだ」と運動が脳に教え込む。これがアメリカの不安障害の大学生がウォーキングによって体験した効果である

結局心の問題なので、いかに脳をうまく騙していくか。

字のごとく”洗脳”していかねばならないのです。

抗うつ剤とランニングの比較

ということで、まとめるとこんな感じ↓

抗うつ剤 ランニング
即効性
持続性
副作用 -

  • うつ病はノルアドレナリンやドーパミン、セロトニンが欠乏しておりBDNFが少ない状態
  • 抗うつ剤はノルアドレナリンやドーパミン、セロトニンを補完してBDNFの生成を促す薬
  • ランニングは直接BDNFを増やす行為

だいたい云わんとしていることは理解いただけたと思います。

しかし、分かっているだけじゃダメ。


実際に行動に移してみることが難しいんですよね。

なんせ、BDNFが枯渇して、モチベーションが下がっているので。

ランニングで克服する方法

『運動脳』では至るところに

週3回・30分のランニングを、まずは3週間続ける

と書かれています。


だいたいそれが研究者たちの一般的な見解なんだと思います。

でも言うは易しで、精神病を抱えた状態でそうすんなりと動き出すことはできません。


ということで。

ここから先は、著者よりも、どんな研究者よりも、ランニング経験の豊富な(はず?の)私が、経験談を基により具体的な克服ランニングを解説したいとおもいます。

薬を併用する

まずは薬に頼りましょう。

私の場合は「レクサプロ」という抗うつ剤が処方されました。


薬で少しでも元気になっているうちに、治すための努力をするのです。

運動をするでもいいし、他の手立てを探すのでもいい。


そうやってるうちにだんだんラクになる時間が増えてきます。

絶望しかなかった景色に少しずつ光が差し込んでくるのです。

フェーズフリーを使う

最初は走ることにさえ恐怖を感じていました。

なので、走るつもりじゃないよ、脳をだましつつ運動を再開します。


そういうときに役立つのが、「フェーズフリー(phase free)」という考え方です。


▼ジョガーパンツのレビュー


ランニングウェアに着替えると構えてしまうので、ジョガーパンツ台湾サンダルで散歩しつつ、スロージョギングに移行していきました。


▼走れるサンダル「台湾サンダル」のレビュー

きっかけを遠ざける

メンタルがやられているときは、特に無茶はしないと思いますが、

  • 故障したのであれば、低負荷な運動に切り替える
  • プレッシャーから来るメンタルであれば、ジョギングに切り替える

等、障害のきっかけになった行動は避けたほうが良いです。


私の場合は熱中症がきっかけだったので、日光を浴びない夜ランに切り替えてリスタートを切りました。

田舎で暗闇を走るのはどうなんだろ…と期待していませんでしたが、星景を拝んだり、光跡写真を撮ったりと、皆さんと交流しながら楽しめました。


走り出せば色々と見つかるものですね。

▼夜ランの楽しみ方・5選

しゃべりながら走る


#センシティブとは失礼な!

パニック障害の発作って一人で不安になって起きがちなので、気を紛らわすために喋りながら走ってた時期もありました。

さらに、自分に対して「よし、大丈夫!」と言い聞かせたり、発破をかけることもできます。


会話ができるペースで走れば、息が上がるようなペースで追い込むことも防げるので一石三鳥でした。

※喋れないくらい息が上がってしまうのはペースを上げすぎ


最終的に歌を歌うという黒歴史が作れれば勝ちですね ^^
#ちゃんと歌った有言実行オトコ
#さすがに黒歴史すぎて消した

薬を減らす

慣れてきたら少しずつ薬から脱却することを意識し始めました。

運動には抗うつ剤と同じ効果がある。ただし、ランニングを1回につき30分以上続けること。できれば週に3回。効果が実感できるまでに数週間かかるが、効けば、抗うつ剤と同じ効果が得られる

いきなりやめると再発してしまうらしいので、少しずつ、少しずつ。

3日に2回にして様子見しつつ、2日に1回にしてみてとうかな〜ってな具合に。


その間も薬代わりにランニングが「ノルアドレナリン・ドーパミン・セロトニン」を補完してくれてるんだと自己暗示を忘れずに。

おかげで2日に1回に減らすことができました。
(飲み忘れると3日1回になることもある)

トライ&エラーを繰り返す


調子が良くても、やっぱりトリガー(私の場合は暑さや湿気)が迫ってくると挫けそうになります。

フラッシュバックが起きてリタイアしたこともありました。


でも、歩みを止めてはなりません。

失敗の原因を追求して、工夫して克服していくのです。

数値化する

失敗したときに、次に同じ失敗をしないようにシステム化することが再発防止策の常套手段です。

ということで心拍アラートを導入しました。

手っ取り早くシステム化するなら数値化が良いでしょう。


ペースや距離ではなく、時間と心拍数がバロメータになります。

おかげで自己肯定感が上げられるようになってきました。

WSは元気になってから

元気になってきたら疑似インターバルとしてWS(ウィンドスプリント)を取り入れます。

心拍を上げてみて、大丈夫だったらもう一本。


負荷をかけるというよりも刺激を入れる程度に、ね。

そして1年後


はっきり言って、熱中症の後遺症が原因だったので夏はまた落ち込むんだろうな…と期待していませんでした。

しかし、である。

むしろ、7月に入ってからのほうが調子が良くなったのです。

最近は蒸し暑い中、走って帰ってきても吐き気がしない。
#実は今までずっと気持ち悪かった


これはひとえに運動脳とランニングのおかげだと思うのであります。

感謝。

【注意!】オススメしない治療法



『運動脳』に出会って人生が前向きになったワケですが、私もいきなりこの本に出会ったわけではありません。

『運動脳』に出会う前、それこそ藁にもすがる思いで、『パニック障害の治し方』みたいな本を手にとったこともありました。


しかし、逆効果でした。

決してそのような本を否定するつもりはありませんが、私の場合は「大丈夫、大丈夫」と云われれば云われるほど、「ああ、自分は病人なんだ…」という意識を強化してしまうように感じられたのです。


皆さんも経験があるんじゃないでしょうか。スピーチの前に「緊張しない方法」をインプットしすぎて、逆にもっと緊張してしまった…みたいな、あれのパニック発作バージョンです ^^;

いろんな人の病状を自分と重ねてしまうので、病んでるときこそ読まないほうが良いのではと思っています。


一方で、『運動脳』は患者に向けて書かれた本ではなく、ただ事実について淡々と書かれているため、良い意味で寄り添うのではなく、一歩引いた目線で自分を客観視できる。

そこが良かったんだと思います。

最後に

最後にランニングでメンタル崩壊してしまった皆さんにアドバイス。


結局

ランニングで受けたダメージはランニングで治すしかない
これが真理です。

メンタルはフィジカルから生まれるとも言いますからね。


特にランニングを辞めるとBDNFが減ってしまい、負のスパイラルに入ってしまいます

でもなぜランニングでBDNFが増えるかを今一度考えてみてください。

祖先が、狩猟や住み処を探すときに走っていたため

そう、祖先は生きるために走らなきゃいけなかったんです。

獲物を狩るとき、恐怖から逃げるとき、住居を探すとき ──

だから三大欲求と同じように、走ると快楽が生まれるようにDNAに刷り込まれているんです。

と同時に

苦痛は本能的に忘れるようにできている

んだそうです。

母親が痛い思いをして子を産んでも、いつか痛みを忘れ、また子孫を残そうとする ──

それと同じで、走ることは子孫繁栄と大きくかかわりがあります。


ほら、マラソンも二度と走るか!と思ってたのに、またエントリーしちゃうでしょ。


だから、まずは走ってみよう。

続けるか諦めるかは、その先の話だ。

この体験が少しでも誰かの励みになれば幸いです。

PS. ランニング用品は保険適用にすべき?

ランニングの効能を呟いたところ、フォロワーさんからおもしろコメント頂きました。

それならランニング用品は保険適用にすべきだとw

少なくともこの本、『運動脳』は3割引にして全国民に配っても良いレベルです。

国が許さないだろうけど ^^;

あ、あと。オーディオブックでも読めるらしいです↓

Fix the Bits.