池波正太郎著の『男の作法』を再読した。
- 作者: 池波正太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1984/11/27
- メディア: 文庫
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あらためて読んでみると、著者の度量の大きさや謙虚な態度、食や物にたいする品性などがぐいぐい伝わってくる内容となっていた。
残念ながら、食についてはあまり僕の琴線にふれなかったが、それ以外に見習いたい心構えがいくつかあったので、ここに記しておきたい。
前提
まず、人間はつねに矛盾をかかえた生き物であることを受けいれること。
曰く、
人間という生き物は矛盾の塊なんだよ。死ぬがために生まれてきて、死ぬがために毎日飯を食って……
それが理解できてはじめて懐の深い人間になる資格をえられる。
というか、この本を読みすすめる権利をえたようなものである。
ただ理屈でもって全部割り切ってしまおうとすれば、もともと矛盾の存在である人間がつくっている社会の苦痛とか、苦悩とか、苦悶とか、傷痕とかというのはひろがるばかりなんだよ。
もともと矛盾している人間が形成している社会の矛盾を、理屈で一刀両断するとときとしてお互いくるしむことになる。
正論ってやつだ。
要は、その両方をうまく応用してやらなくてはならないということだよ。理論や計算に基づいた厳しい姿勢と、そこにきかせる人間的な融通と、どちらか一方だけではだめなんだよ。
そのバランス感覚がだいじ、ということである。
そうだ、融通無碍というじゃないか。
肩肘はらずにいこう。
懐の深い人間になれる3つの作法
数ある「男の作法」から、なかでも池波氏のようにおおらかでストレスフリーにくらすために、僕が日常にとり入れたい作法を3つピックアップしてみたので紹介したい。
(1)旅行の作法
旅に出て心身を休めるんだったら、観光シーズンに行ったら何にもならないわけだ。絶対休まらないからね。だからシーズンオフを狙って、昔は行ったものですよ。
京都だったら三月になった途端にね、シーズンに入る直前に行くとか、伊豆のほうだったら二月の閑散期に行くとかするわけですよ。
京都なんか十二月が一番いいんです。(中略 )
梅雨どきに北海道へ行ったら梅雨なんかないからねえ。
時期をずらす、というライフハック。
日常的に採りいれているが、巨匠もそうなんですね、ということが再確認できた。
(2)万年筆の作法
万年筆というのは、男が外へ出て持っている場合は、それは男の武器だからねえ。(中略)だから、それに金をはり込むということは一番立派なことだよね。貧乏侍でいても腰の大小はできるだけいいものを差しているということと同じですよ。
(中略)
万年筆と、それから手帳なんかもそうだね。
仕事柄というか、時代なのか、ここ数年で文房具や手帳をまったく持ち歩かなくなってしまった。
万年筆や手帳が武器ではないなら、今の商売道具は何か?
この機会にあらためて見直したいテーマである。
(3)チップの作法
タクシーに乗って、メーターが五百円だったら六百円やる。(中略)百円チップをやることによって、やったほうも気分がいいし、もらったほうも気分がいいんだよ。
(中略)
今度、タクシーに乗ったときにだね、やってごらんなさい。
(中略)
そうすれば、その人がその日一日、ある程度気持ちよく運転出来るんだよ。それで、おおげさかも知れないけど、交通事故防止にもなるんだよ。
タクシーに乗る機会はほとんどないが、感謝の表現手段として「心づけ」という作法があることは頭においておきたい。
むつかしいのは、それをスマートにできるか。
そればかりは場数をふまねばならないとおもうので、まずは「いつ・どこで・誰に・どんなタイミングで・どんな声かけで」渡すべきか常日ごろから覚悟がいるだろう。
***
以上。
明日からすぐに使える!というわけにはいかないが、日常的に意識していざというときにさりげなくこなせるように心づもりしておきたい。